ごあいさつ

愛知医科大学病院
周産期母子医療センター新生児集中治療部門 教授 山田恭聖
私たち、
愛知医科大学病院周産期母子医療センター 新生児集中治療部門(NICU)は、
以下の理念を持って日々の診療に 当たっています。
新生児の診断、治療、ケアには、NICUの医師や看護師だけでなく、関連スタッフ、他診療科、そしてご家族の協働が必要不可欠です。
それぞれの専門職が専門性を発揮するとともにお互いを尊重し、対等な立場で検討したうえでご家族と共にケアプランを決めていく。これこそがチーム医療「対等と尊重の協働」の本質と考えます。
多くの医師がこの理念に共感し、愛知医大に集い、学び、巣立ち、全国のNICUで活躍しています。
NICUにおける「真のチーム医療のリーダー」としての資質を学べるのが、当NICUのアドバンテージです。
是非私たちと一緒に「みんなが 安らげるNICU」で働きませんか?

多職種連携
COLLABORATION
赤ちゃんのご家族は
目標と責任を共有したパートナー
私たちが目指すNICU

赤ちゃん・家族・スタッフの居心地のよい環境
一貫して目指しているNICUの環境は、赤ちゃんにとって居心地のよい環境はもちろんのこと、家族が居心地のよい環境、そしてNICUを訪れた他のスタッフが居心地のよい環境です。
それはなぜなら、NICUに入院していない赤ちゃんが育まれる「おうち」がそうだからです。赤ちゃんを取り囲む家族は笑顔になり、その家を訪れる親戚や知人も赤ちゃんがいる環境を温かく感じる。そんな柔らかな環境に赤ちゃんも安らぎ笑顔になる。そしてこれを見た家族がまた笑顔になる。
こんな笑顔の連鎖は、その空間を柔らかなベールで包み込んでくれる。
これが本来赤ちゃんのいる空間なのです。
目標を共有する
対等で尊敬できるパートナー
目標を共有する対等で
尊敬できるパートナー

赤ちゃんがなるべく痛くないように
当院NICUでは2011年以降、「赤ちゃんの痛みケア」を精力的に進めてまいりました。
もちろん痛みのケアの中には、医師にしかできない痛みケアがあり、技術のある看護師にしかできないケアもあります。
しかし痛みケアの場合は、ご家族にしかできないケアが存在することが、他のケアよりも理解しやすいのではないでしょうか。ママに抱っこしてもらったり、おっぱいをしてもらったりしながら処置をすることが、何より勝る痛みケアであることは、赤ちゃんの顔の表情を見ていればわかります。
ご家族と医療者は、「赤ちゃんがなるべく痛くないように処置をする」という目標と責任を共有した、対等で尊敬できるパートナーであることを強く意識しています。
役割の分担と責任の共有

「健やかなる成長・発達」を目標としたパートナー
NICUに入院しているお子さんは、診断、治療、ケアのみならず、成長・発達も同時に支援しなければならず、どれも後回しにすることはできません。
ご家族は面会者ではなく、児の養育者であります。そのため、家族は「児の健やかなる成長・発達」に重要な役割を担う責務があり、他の誰とも変わることはできません。
しかしご家庭で育つお子さんと違って、NICU入院中のお子さんは、医療やケアをせずに養育だけを遂行することはできませんので、お互いの調整、協働が必要ということになります。
家族と医療者は、お子さんの「健やかなる成長・発達」を共通の目標とした、パートナーであるべきでしょう。そのためには治療、ケア、療育環境の話し合いの場である回診には、ご家族にも参加していただく必要があるのではないかと考えています。
このような理由で、私どもNICUの入院案内には、回診へのご家族の参加を積極的に勧める文章を記載しています。
このご家族の回診への参加は、決してご家族へのサービスではありません。ご家族との関係は、目標を共有するパートナーであり、お互いに対等であるはずです。またそれぞれお互いには異なった役割が存在しており、お互いに代わることはできません。
そして最終的な結果への責任も共有することで、真のパートナーシップが形成されると考えています。そのため、回診は情報提供の場だけに止まらず、必要な医療的情報を提供した上で、「お子さんに最も適したケアはどれと感じますか?」などと積極的に発言を促す場面もあります。
究極の形

温かく柔らかなNICUへの道
「チーム医療」や「デヴェロップメンタルケア」、「ファミリーセンタードケア」などNICUの取り組んできた協働は今までたくさんありました。
しかし、これらを全て包括、卓越した形が、ご家族と医療者がお互いに敬意を持って対等に論じ、「赤ちゃんの健やかなる成長・発達」という目標と責任を共有するご家族との日々の回診ではないでしょうか?
重篤な疾患を持つお子さんだけではなく、毎日の回診や日々のケアプランの作成にもご家族に参加して頂き、目標と責任を共有することが、私たちが目指す温かくて柔らかなNICUへの道を切り開いてくれるのではないかと思っています。
温かく、柔らかな空気

自然に笑みが溢れる病棟
このような病棟で一貫した理念、「対等と尊重の協働」「ご家族も含めた、目標と責任の共有」は、訪れる多職種のスタッフ、学生や研修医も含めた人々にも伝わっていると信じています。多くのNICU来訪者がこの温かく、柔らかな空気を感じ取って頂き、自然に笑みが溢れる病棟が、目標とするNICUです。
赤ちゃんの快適さを、ご家族とともに相談し協働している結果、赤ちゃんだけでなく、ご家族も、そして訪れる人々も居心地がよいと感じていただけたら嬉しい限りです。
部門の特徴
FEATURES
本学NICUで特に力を入れて、診療・研究・普及活動を行なっているのは、
「新生児の痛み緩和」
「新生児蘇生法プログラム」
「保育器内、人工呼吸管理中の加温加湿環境」などです。
01
新生児の痛み緩和
新生児ケアにおいて、痛みに対する配慮は長きに渡り不十分でした。しかし近年、NICU入院中の新生児の痛みに配慮しないことが、倫理的な問題のみならず、将来の発達予後に負の影響を及ぼす知見が蓄積されています。
2014年に初版が発刊された「NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン」は現在2回目の改定作業が行われていて、本学NICUからも複数のスタッフが改定作業に携わっています。また私たちのNICUでは、開設当初から国内ではいち早く赤ちゃんの痛み緩和に注力し、2014年には中北薬品株式会社との共同研究で、痛み緩和に用いる「単包化ショ糖液」を国内で初めて共同開発しました。
日々の診療でもご家族や看護師と相談しながら痛み評価スケールを選択して、そのお子さんに合ったオーダーメイドの痛みアセスメントを行なっています。また薬理的緩和法では病棟薬剤師も加わり検討しています。
02
新生児蘇生法プログラム
半数以上が病院ではなくクリニックで出生している本邦において、医師のみならず医師以外のスタッフの新生児蘇生法習得が必要であるとの理念のもと、新生児科医師のみならず、NICU看護師がインストラクターを取得するプログラムを開始し、現在までに看護師30名以上のインストラクターを養成してきました。
2012年より地域の産科クリニックを対象として、医師と看護師で出向いて行う出張講習会を開始、現在まで100回をこえる講習会を開催し、地域新生児蘇生技術の知識の向上に努めてきました。
さらにこれまでの新生児蘇生法普及に対する実績が認められ2020年度より、インストラクターを要請する施設である「新生児蘇生法トレーニングサイト」の認定を受けました。
現在はインストラクターを指導し、知識・技術・態度を担保する役割である、クオリティーマネージャー(QM)の養成を進めており、すでに5名のQMが活躍しています。
今後は新生児蘇生法プログラムおよびインストラクター養成を地域救急隊員にも拡大し、地域の新生児蘇生法のレベルアップに貢献したいと考えています。
03
保育器内、人工呼吸
管理中の加温加湿環境
NICUでケアを受ける赤ちゃんの「おうち」は保育器です。
この保育器はそれぞれの赤ちゃんにとって快適な環境である必要があります。保育器開発の技術は年々進歩し、保育器の温度・湿度が低すぎることはなくなりました。
しかし赤ちゃんによっては、逆に温度・湿度が高すぎて下げられないことが、不適切な環境になっている問題が浮上しています。この問題に対して、私たちのNICUでは保育器メーカーと共同して全く新しいコンセプトの保育器を開発しています。
ここでは紹介しきれませんが、私たちのNICUでは
「赤ちゃんに優しいNICU」をスローガンに、ケアに関わること全てに、 「もっと・さらに」をキーワードに挑戦し続けています。